駐車場警備員の詩(うた)

警備に関する雑詠です。たまに普通の記事を書きます。

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ホタル祭り警備日誌-3-

①番ポストの丸川は出入り口の歩道に立った。
普段のボートレース場での勤務と同じように、足を左右に広げ胸を張り後ろ手をして周辺を監視した。人通りは少なく音楽ホール玄関脇に立つ香野が見えた。
彼はソフトクリームのロボットをずっと見ているようだった。ふと気が付くと姿が見えなくなった。出店をのぞいているのだろうか。


(① 番ポストの歩道から仮設ステージ側面と交差点方向)


音楽隊の演奏が終り片付けを始めた。
「あのう、すみません」と声を掛けられた。振り向くと中年男性が「ここら辺で公衆電話はどこにあるかご存じでしょうか」と聞かれた。
丸川は交差点付近のコンビニにあるのではないかと答えたがそこにも無かったと言う。
わからない時は無線である。「ちょっとお待ちください」
そう言って無線で問い合わせた。
「一番ポストの丸川ですが、公衆電話がどこにあるか知りませんか」
すぐに香野から返答があった。
「音楽ホールか川向うの図書館にあると思います。図書館だと確実です。何なら私の携帯を貸しますよ。どうぞ」
「はい、了解」
男性は無線を聞いていて「そうですね。さっそく行ってみます。どうもありがとうございました」と言って音楽ホールの方へ急いだ。
入れ替わるように香野がやってきた。交代の時間だ。「交代します」と言って敬礼した。
丸川は敬礼をして「異常ありません」と返礼した。
「あ、丸川さんは普段はボートレース場ですか?」
意外なことを聞かれた。丸川はなぜわかったのかとけげんな顔になった。
「ああ、まあ、そうです」
「やっぱり。立哨の時に後ろ手をする人はボートレースの人しかいませんし『異常ありません』というのもそうですね」
「もしかしてボートに行ったことがありますか?」
「ええ、丁度2年前に2年間務めたボートレース勤務を辞めて土日の駐車場専門になりました。ですから今は警備員5年生です」
「当時は嫌な同僚先輩とかいましたか?」
香野は思わず笑った。
「アハハ、たくさんいましたよ」
やはりと思いながら「で、どうしました?」と聞いた。
今の自分がどう対応したらいいのかわからずにストレスになっている。このままだと病気になりそうだった。
「話せば長くなりそうなので帰りまでにお話します。とりあえず休憩されて下さい」
「はい。わかりました」
と言って有料駐車場の待機車両に向った。


(つづく)

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