自己満足でした。
もちろんミリエル司教の足元には及びません。
でも『いいことをした』と思っていました。

ところが思いがけないことをＳ事務員から言われました。
「あの人は、町の有名人です。尺寸詐欺の常習者です」
「そうなの・・・？」
「隣近所や商店街などに出かけて、五百円貸してと借りて返しません」
「じゃあ、生活保護はどうなの？」
「しっかり受給しています」

生活保護費は毎月１日に支給されます。
その日が休日なら前月の最終平日に支給となります。
つまり１１月１日が日曜でした。ですから１０月３０日の金曜日が支給日になります。
競艇場勤務時に教わりました。
生活保護費をギャンブルに使う人が多いのでいかがなものかと思ったものです。

Ｓ事務員は地元なので事情を知っていました。
「杖ついて苦しそうに歩いていたでしょ？」
「はい」
「それは嘘です。ちゃんと歩けます」
「３０日に借金を返えしてもらえるというのは・・・」
「それも嘘です。人に貸すようなお金は持っていません」
「もしかしてギャンブルに使っているのですか？」
「はい、パチンコやボートレースに行っています」
「それで食い詰めて尺寸詐欺ですか」
「でも五千円貸してと言われたのは聞いたことないです。裕福だと思われたのでしょうね」
私は苦笑するしかありませんでした。
（この話はおしまい）