駐車場警備員の詩(うた)

警備に関する雑詠です。たまに普通の記事を書きます。

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ホタル祭り警備日誌-5-

丸川は歩道の北尾と交代した。北尾が園児バス出庫の引き継ぎをして待機に入った。
園児バスが駐車している。仮設ステージでは幼稚園児が出演中だった。演技が終わると園児たちを乗せてバスが出て行く。その時に歩行者の安全誘導を行う。
丸川は日陰をえらんで立っていた。普段はレース場内にいるので外での仕事は新鮮だった。
つい「気楽でいいなあ。天気もよく青空だ。たいして混雑もない。疲れないし立っているだけでいい。難しいことは何にもない。メンバーもいい」とひとりごちた。
ただしこの場所は喫煙場に近いことから受動喫煙がある。
ボランティアの若い男女が歓談しながら盛んに煙を吐いている。それを避けるため少しずつ公園側に遠ざかっていく。


香野は歩いてステージの様子や観客を見ていた。出店の客の様子も見たりしていた。いわゆる動哨であり「歩いて警戒」をしていた。
メイジェイ(May J.)のコンサートがあるというので音楽ホールの中に入って確認した。
300人収容できる大ホールで17時に入場開始して18時開演だった。チケット料金は全席6000円だった。そのぐらいのことは聞かれたら答えたいものだ。
メイジェイは圧倒的な歌唱力を誇り3年前にディズニー映画「アナと雪の女王」の「Let it go」をカバーして一躍大人気になった。同年の紅白歌合戦に出場も果たした。


香野はそのメイジェイを音楽ホール玄関前で見た。
女性二人が急ぎ足で目の前を通り過ぎようとしたときに若い女性の引いていたキャリーバックが突然開いて小箱などがバラバラとこぼれた。
完全に閉まっていなかったのだと思う。振動で開いたようだった。
本人は立っているだけで困った顔をした。マスクをしていたが香野と目が合った。あっと思った。「メイジェイだ」。
もう一人の女性が気づいてしゃがんで拾い始めてバッグにしまい込んだ。そそくさと音楽ホールに入っていった。
後で北尾と丸川に話したが、メイジェイを知らないという。
「あ、そうなんだ。それが我々おじさんの普通なのだ」と思った。


中年女性から「ホタルってどこにいるの。今見える?」と聞かれた。
「図書館とここの公園の間に流れている川に人工飼育したホタルが400匹くらい飛ぶそうです。上流の厚生年金病院の近くが見どころだそうです。もちろん夜見て下さい」
「そうね。昼間は見えないよね、おほほ」


仮設ステージでは楽しいショーが演じられていた。人気キャラクターショーもあった。昨秋の自動車会社主催のお祭りでは「クマモン」が来ていたがここには来ていなかった。ぬいぐるみに付き添っているスタッフの上手な広報や好感度合の良い方に親子連れが寄ってきて写真撮影をしていた。
今日の警備には三人とも共通の認識だった。
「来てよかった。だがいつ帰れるか。それが問題だ」
(つづく)

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