駐車場警備員の詩(うた)

警備に関する雑詠です。たまに普通の記事を書きます。

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警備員が覚えておかなければならない拾得物の対処

競艇場で拾得した現金などは警備本部で一旦保管します。
3カ月経って持ち主が現れないと貰える権利が発生します。
裸のお金ですと所有者が見つかる可能性がほぼありません。
ただし施設で働く警備員などの従業員にはその権利はありません。


「3投(さんとう)から巡察2どうぞ」
エロガッパは無線で巡察を呼び出しました。


3投は「第3投票所」の略で1階西側の投票場のことです。
「巡察2です。どうぞ」OMが返信しました。
巡察は3人いて1から3まで番号があります。
A競艇場では立哨中の警備員が見つけた拾得物は巡察2が受け取り警備本部に届けることになっています。


「拾得物Aがあるのでよろしく」エロガッパはていねいな言葉遣いはしません。
「巡察2、了解」
「以上、3投」


拾得物Aとは現金や鍵、携帯電話などの貴重品の落し物を示す隠語です。
他にBとCがあります。Bは舟券でCは傘や杖、帽子などを表します。
ボートレースファンに警備員同士の無線を聞かれても刺激をしないように配慮しています。


巡察2のOMが3投にやってきました。
エロガッパはズボンの右ポケットから折りたたんだ千円札を取り出して渡そうとしました。
OMはえらの張った四角い顔をして剣呑な細い目でにらみました。


「あのさー、拾ったお金をポケットに入れたらいけないよ。拾った5千円札を左のポケットに入れて右から自分の千円札を出したと思われるでしょ?」
「ほおー、そんなことをする警備員がおるのか? いい事を聞いた」とエロガッパは納得しました。
「お金はマークカードや新聞紙で隠して手で持ちなさい。ポケットに入れない事。ところでどこに落ちていたの?」
「舟券発売機の前らしいです」
年配のボートレースファンが「千円、落ちとった」と言ってエロガッパに届けました。


「それは誰だよ。どのお客さん?」
エロガッパは自分の赤ら顔が一瞬にして白くなった気がしました。
目をしばたたかせて正直に答えました。
「これだけいますので、もう誰だかわかりません」
OMは小ずるい顔をして言いました。
「探せよ」
「立哨があります」弱々しく反論しました。いまさら探しようがないやと思っています。
「俺が代わって立哨するから、客席を一巡して探しなさい」
(つづく)

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