駐車場警備員の詩(うた)

警備に関する雑詠です。たまに普通の記事を書きます。

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忘年会帰りに警備員が幻覚を

コップ酒で6合ほど飲みました。
班長のDEさんと仕事をしてあっと思ったことはたくさんあります。
そんなことを思い出しながら帰ることにしました。
居眠り僧侶とエロガッパに「お先に帰ります」と挨拶しました。
駅前商店街の鍋屋からJR駅に向かいました。


・・・本屋でも行くか。
夜の8時が近くなってきて人通りもまばらになっていました。
代わって、とりどりの猫が現れました。本屋にも薄汚れた駄猫がいました。
平積みになった本の上を猫がのそのそと歩きます。
私は一瞬体を震わせました。猫ではなくあるはずのない本が置いてあるからでした。


『完全版ガリバー旅行記』・・・子どもの頃に読みました。
だが完全版ってそんなガリバー旅行記は聞いたことがありません。
ベストセラーにまじって一冊だけ浮いている本を開き、奥付をみて再び体が震えました。


『昭和三十八年十二月 初版第一刷 定価四百円 著者スウィフト』
およそ50年前の初版本であるにもかかわらず、新品同様でした。
第1編は「リリパット国渡航記とその後」です。そう小人の国の話です。
その後ってなんだ。夢中になってページを繰りました。


「閉店ですよ」
奥の方で店番のおばあさんの声が響きました。店の半分が暗くなり猫は飛び降りいなくなりました。
「これを・・・」
あわててレジに持っていきました。
「400円です」
千円札を出しました。
ブックカバーをつけようとしたおばあさんはけげんな顔をしました。
「これはなんですか。千円札のようだけど?」
「え?」
目が薄いのだろうか。百円硬貨や1万円札を出してみせました。
「よくできているけど本物じゃないよ」とおばあさんは警戒しながら言いました。
「50円玉だってこんな小さくもないし100円銀貨も図柄が違うね。10円だけは本物みたいね」
「うーん・・・?」
「明日またおいで」


暗くなった本屋を出ると隣のタバコ屋のシャッターが勢いよく降りて少し驚きました。
あんなにいた猫の姿も見えなくなっていました。

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