秋のそよ風コンサート
水巻町社会福祉協議会主催の「ふれあい活動普及講座」があった。
遠賀郡内を中心にボランティア活動をされている「ヒーブホー」による弾き語りの「秋のそよ風コンサート」である。知る人ぞ知るグループだ。
平日の午前10時開演とあって、参加者はシニア世代が中心で、特に女性が多かった。
私は前日のテニスの壁打ちのせいか、朝の目覚めが悪かった。7時に目が覚めて「ベッドでする3分間ストレッチ」を三種類ほど行ったところ、ほどよい疲労感から再び眠ってしまった。次に目を覚ますと9時30分だった。
会場は近く、自転車なら5分ほどで着くのだが、あいにくの雨である。傘を差し、少し急ぎ足で向かった。
ギター、マンドリン、そしてコカリナの演奏と歌が続いた。コカリナの演奏の後には「里の秋」を全員で歌った。
私は二番の歌詞で思わず涙がこぼれた。
「ああ父さんのあの笑顔 栗の実食べては思い出す」
私はシングルマザーに育てられた。父のことは「赤穂の人」ということしか聞かされていない。
暮らしは苦しく、学校で使う笛やそろばんなどの副教材を買ってほしいとは言えなかった。夏のプールも水着がなく見学だったので、中学生になるまで泳げなかった。
習字の時間は筆がないため、鉛筆を持って書く真似だけしていた。音楽の授業で使う笛もなく、「忘れました」と言ってやり過ごした。
ノートも全教科で一冊を使い回し、最後には教科書の余白に書き込んでいた。
家にはテレビもラジオもなく、日曜日になると友人の家で見せてもらった。
だから楽器を自在に演奏し、歌を歌える人たちがとてもうらやましかった。
小学生の頃、私にとって楽器といえば、放課後の教室で我流で弾くオルガンだけだった。帰宅しても誰もいない。一人っ子の鍵っ子だった。
町の図書館へ行くか、こっそり教室へ戻って勝手にオルガンを弾く。校庭では野球チームが練習している。私もやってみたかったが、道具が高価で母には言い出せなかった。
笛すら買ってほしいと言えないのに、グローブやスパイクを買ってほしいとはなおさら言えなかった。
演奏会の温かな音色を聴きながら、そんな子ども時代のことが次々と思い出された。
秋のそよ風コンサートは、懐かしい歌を楽しむだけでなく、忘れかけていた自分の原点を振り返る時間にもなった。