駐車場警備員の詩(うた)

警備に関する雑詠です。たまに普通の記事を書きます。

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ひと安心爆弾騒動残暑なほ

スーパーの駐車場警備をしていますとパトカーをよく見かけます。
万引きなどがありますと業者出入口から入ってきます。すごく多いと思っていたら隊長から無線が入りました。
「無線各局、無線各局。専門店街の男子トイレに不審なスーツケースがあって警察の危険物処理班が来ています。詳細はわかり次第連絡します。以上」


テロかもしれません。爆発物の疑いのある物件を発見しますと「触るな」「動かすな」「近づくな」の三原則を守ることが肝要です。常駐の警備員が爆発物かもと想定し警察に処理を依頼したのかもしれません。
しかし普通はトイレにアタッシュケースがあるのは不審物、いわゆる「その場にあるのが不自然なもの」ではないです。
私が第一発見者ならためらわずに持ってみて重量物が入っているか確認します。通常の重さであれば開けて確認したでしょう。異常に重ければ爆弾が入っているかもしれません。


トイレ周辺が立ち入り禁止となって駐車場警備の隊員も何人か閉鎖監視に駆り出されました。
数時間後に隊長から無線が入りました。
「無線各局、無線各局。男子トイレにあったスーツケースには危険物はありませんでした。持ち主も判明しました。閉鎖は解除になりました。以上」


隊員が減って待機時間が短くなっていました。
「なんだ」とほっとしたと同時に疲れがでてきました。


ひと安心爆弾騒動残暑なほ
足の重くなりゆく思ひ残暑なほ



(PIXTA画像の無料サイトから)

真夏日に手渡されたる財布かな

スーパーの店舗前で歩行者と車両の誘導をしていました。
日蔭もない暑い午後にご婦人から声を掛けられました。
「自転車の前かごに財布がありました」
と私に手渡されました。チャックが半分開いていてお札が見えていました。
「どの自転車ですか」と駐輪場に移動して確認し時計を見ました。
落とし物ではなく忘れ物のようです。


そして面倒だなと思いました。
報労金を請求する権利と所有権を取得する権利の確認が頭に浮かびました。
報労金とは「お礼」のことです。20%以下の額になります。
また3カ月たっても持ち主がわからないと、拾った物をもらえます。ただし施設内で拾ったのでお店と折半になります。
この2つの権利を放棄することもできます。そのような説明もしないといけないかもしれません。


「ではご一緒にお店のサービスセンターに届けに行きましょう」
と提案しますと「じゃあ、私が行ってきます」
ほっとして「お願いします」と財布を渡しました。


「店舗前から隊長、どうぞ」。無線で報告します。
「はい、どうぞ」
「駐輪場の自転車のかごに財布がありました。発見したお客様にサービスセンターに届けていただきました。どうぞ」
「一緒に行かなかったのですか。なるべく一緒に行って下さい。どうぞ」
「はい、了解しました。以上、店舗前」


あのご婦人がサービスセンターに正直に届けてくれたか気になってきました。でも信じてサービスセンターで確認することはしませんでした。


真夏日に手渡されたる財布かな


(Photo AC 無料写真素材から)

落とし物その後に沙汰のなかりけり

駐車場警備をしています。
時には昼間に駐車場の巡回を命じられることもあります。
警備員の巡回は施設防犯のため夜間に行うことが基本です。足音を立てずに懐中電灯はなるべく点灯しないと聞きます。


昼間の駐車場巡回は、駐車場の犯罪抑止効果が狙いです。
警備員が駐車場を巡回することにより車上荒らしやタイヤパンクなどのいたずらを防止します。


お客様の目を引くように駐車場の隅までくまなく歩きます。
財布を拾ったことがあります。
ネコババはしません。監視カメラや誰かが見てるかもしれません。すぐに無線で隊長に報告します。
「2階駐車場から隊長どうぞ」。自分がいる場所を言います。
「はい、どうぞ」
「拾得物Aがあります。どうぞ」。Aとは現金や鍵など貴重品の隠語です。隠語はDまであります。機会があれば紹介します。そして落とし物とは言わず拾得物と言います。
「了解。すぐに行きます」
財布などは警備員2人で内容を確認します。黒い折り畳みの財布で3万円以上入っていました。隊長が店内のサービスセンターに届けました。


1時間以上たってその場所に戻って来ました。若い男性が車の下や周囲を気ぜわしく見ていました。ぴんときました。
「何をお探しですか?」
「はい、財布を探しています。この辺りで落としたと思います」
どんな財布か尋ねると黒い折り畳みと言います。
「もしかして親切な人がお店に届けているかもしれません。レジの横にあるサービスセンターにお尋ねになってはいかがでしょうか」


警備員が「それは私が見つけた」と言ってはいけません。違う財布かもしれないし後からお金が足らないと言われるとトラブルになります。
男性は走って行かれました。その後何も言われませんでした。きっと戻ったことでしょう。


落とし物その後に沙汰のなかりけり
(作者注:この句には季語がない、いわゆる無季俳句です。推敲中です)
落とし物届けし警備士夏の昼
(作者注:強引に夏の警備員俳句にしましたが味わいがありません)
落とし物この辺りでという人に知らぬ顔して教える警備士
(作者注:俳句の推敲は難しくとりあえず短歌にしてみました)


(PIXTA画像の無料サイトから)