(元)敬老警備員の詩

警備員俳句や警備員短歌をタイトルにした警備に関する雑詠です。

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霊能者警備員の経緯

霊能者SYさんはにこにこしながら私に手を差し出してきました。
「ああ、手が熱いですね。心も体も生命力が力強く燃えています。悪いところはないです。OSさんはお腹が悪いですよ」
と言いました
実際その通りに同僚のOSさんは胃がんになって4年後に胃の全摘手術を受けました。


「そうですか。ありがとうございます。どうやってそんな能力が身についたのですか」
と尋ねた。
「実は死にかけたのです。臨死体験をしました。まあ座りましょう」
と言って次のような話をしました。


今から50年数前に北九州市が誕生した。
その年の夏休みに中学3年生だったSYは八幡市民プールに友だちと行った。
太陽がプールの水温を暖め、肌に心地よい。塩素の独特な臭いがつんと鼻に刺す。
SYたち4人は泳いだり潜ったりしてプール遊びを楽しんだ。
SYは一人で遠泳を始めた。平泳ぎで25メートルプールを何度も往復した。
中央付近で息継ぎのため顔を上げたとき「あっ!」と声を出した。
右足に激痛が走り驚いて全身を堅くした。ついでに左脚もけいれんした。
そして両手をばたばたさせたが身体が丸くなって水中に沈んだ。胸までしか水位のない浅いプールである。


SYは4人の中で一番背が低い。
中学生の平均身長より少し低めの背丈、華奢な作りの体で丸顔で優しげだ。
日に焼けにくい色白の肌である。女子からは「SY君可愛い」と言われていた。
好き嫌いなく何でも食べるようにした。
そのうち身長も伸びるだろうし骨格だって男らしくなるだろうと期待していた。


SYは目を開けた。
夏の日差しを体中で受けている。両手も両足も動く。息も苦しくない。水の中でもない。素っ裸であった。水着もつけていない。濡れてもいない。あたりを見回した。


『・・・うそっ・・・』


プールサイドのコンクリートに水着姿の自分が寝ていた。まだ身体も濡れている。
人垣ができていた。懸命に人工呼吸が続けられていた。仲間3人がのぞきこんでいる。それを空中に浮かんで立って見ている自分は何者なんだと思った。
『・・・死んだのか、俺?・・・ 何で寝ているの・・・ ここにいるのに・・・』


空中からふわりとプールサイドに降り立った。全裸なので恥ずかしい気がして手で前を隠した。仲のよかった少年に触れようとした手が体の中に通り抜けていった。
SYはパニックになった。俺はここにいると叫んだが誰も気が付かない。